ドイツで代々受け継がれる優れた製法
若い頃、私はドイツのハンブルグで修業をしていました。ドイツの菓子職人は、菓子造りについて論理的な思考を持っています。ビスキー生地を造るときは、卵、砂糖の泡立て方、粉類の混ぜ合わせ方、溶かしたバターの加え方が生地のテイストにどう影響するか、職人が的確に説明することができました。当時の日本はまだ一子相伝、口伝、見て覚える、見習うといった雰囲気が強かっただけに、私はドイツの菓子造りに大きな可能性を感じたのです。私は甲子園でお店を持ちドイツの伝統的な製法を実行しつつ、本格的なドイツ菓子造りを目指してきました。
その一つが、今ではカイザーを代表するお菓子となった「バウムクーヘン」です。バウムクーヘンはドイツを代表するお菓子で、「バウム」は木、「クーヘン」は菓子を意味し、何層も生地を重ね樹木の年輪を表します。一般的によく目にするものは「バームクーヘン」と呼ばれ、卵を多く使用したビスキー生地に溶かしたバター、生クリームを混ぜたしっとりと柔らかい食感に焼いたバームクーヘンです。
それでは当店での造り方を少しご紹介します。バウムクーヘン専用のオーブンを使用し焼き上げるわけですが、まずはバウムクーヘンの生地造りから始まります。生地(マッセ)は第一にバターと粉類(小麦粉・小麦粉澱粉・アーモンド粉末)とを混ぜ合わせ、次に卵黄・マジパンローマッセ・砂糖をよく混ぜ泡立てます。そして卵白と砂糖をホイップにして三つの生地を混ぜ合わせ、アラック酒を加えてマッセの出来上がりです。